ベケットとヴァン・ヴェルデ
訳者:吉田加南子 / 鈴木理江子
作家・戯曲家あるいは言語芸術家サミュエル・ベケットと画家ブラン・ヴァン・ヴェルデ。
年齢も近いこの二人は無名時代から唯一無二の友情によって結ばれていた。それだけではない。
沈黙の極みから浮かび上がるものをとらえ、困難な過程の果てに差し出される作品、そしてその後ろにそっと消え去る作者、こうした姿勢は今世紀を生き抜いた二人に通うものだった。著者ジュリエはこの二人に出会い、彼らの存在そのもの、ほとんど生そのものを、深い尊敬と共感をこめて見つめ、おのれの内面の奥底で受けとめる。その結果、言葉が言葉として生まれ出るその瞬間、あるいは絵画が絵画として現われ出る現場がとらえられ、沈黙が、まさに息吹として読者に伝えられる。このような生きた証言であることにおいてこそ、本書は、作家であり詩人であるジュリエの作品としての光を放っている。
「しばらく会っていなかったね」
「顔を合わせていなかっただけだ」
-本文引用
沈黙の中からベケットの重い言葉が現れる、
その中には常に憔悴に身を置き、精神の内を探求し続けるブランのよき理解者としての優しさを感じます。
自身の表現に向き合う凄まじい誠実さと苦悩、数少ない言葉の一つ一つから強い印象を受け、
それはどこか心地よく、本を閉じて静かに日常に沁み込んでいくのです。
- 発行年:
- 1996年
- 状 態 :
-
A 状態について
- 新品
- ほぼ新品
- A (古本として綺麗な状態)
- B (古本として経年変色などある状態)
- C (目立つ汚れや傷み、書込みあり)
- サイズ :
- 188×128mm
- 製 本 :
- ハードカバー
- 出版社 :
- みすず書房