どこにでもあるケーキ

三角みづ紀

わたしは十三歳になっていた。

わたしは皆とはちがう

全員がささやかにあらがう

でも完全にちがうのはこわい


三角みづ紀の第８詩集。
詩人の記憶を重ねた13歳を描く33篇の書き下ろしです。
誰もが感じてきた変わっていく心と身体と家族との関係性、
教室の疎外感や世界の美しさを、失った記憶が蘇るように描きだします。

タイトルの『どこにでもあるケーキ』をはじめ、一見すると否定的な言葉に、
どこかそうありたいとも願う繊細な感情が見事に詩となっています。

すべて一人の目線で描かれるため、主人公のいる短い物語としても読め、
しばらく詩から離れていたなという方にも、親しみやすい一冊です。


表紙絵は広告、雑誌、プロダクトなどを中心に活動する塩川いづみさん。
タイトルは細い金の箔、小口と天地に赤インクを塗る、三方小口塗装で造本されています。



三角みづ紀（みすみ みづき）
1981年鹿児島生まれ。札幌在住。在学中に現代詩手帖賞、第1詩集で中原中也賞を受賞。
第2詩集で南日本文学賞と歴程新鋭賞を受賞。
一ヶ月の間、欧州を旅して執筆した第5詩集『隣人のいない部屋』で萩原朔太郎賞を史上最年少受賞。
デビューから現在まで、その活動が一貫して注目される詩人。
2016年度より、南日本文学賞の選考委員を、町田康、又吉栄喜、両氏と共に務める。
http://misumimizuki.com/